獣の旅と音楽

旅の思い出、獣医としての生活、あと音楽とか

ヒマラヤ年越しトレッキング〜ゴラクシュプ〜





2度目の高度順応を終え、最終目的地へ向けて出発。



天気は抜群!12月は天気だけならトレッキングに一番良い季節らしい。


風は強め。雲がいい感じ。


途中でフェニックスみたいな雲を見た。



ペリチェからゴラクシュプまではトゥクラ峠を超えていく。


峠では太陽光でお湯を沸かしていた。光が中心に集まり、かなりの熱量になる模様。




でも頭や洗濯物は冷水で洗う。ひー笑



景色は相変わらず絶景。






氷河が広がる。だいぶイメージと違う見た目。


氷河って、パタゴニアのペリト・モレノみたいな感じかと思ってたけどヒマラヤのはこんな感じ。
でも砂の下に氷河が流れているらしく、時折「ごごごご…」と大きな塊が動く音が聞こえた。

その辺にも氷がむき出しのところがあった。まさに氷山の一角。





氷の中の結晶がきれい。




ゴラクシュプには昼前に着いた。
時間もあるし、せっかくだから近くの丘を散歩しようとジャム蔵に誘われる。
頭痛が始まっていたので少し迷ったが、身体は普通に動かせたので行くことに。
浅井さんは頭痛がけっこう辛いようで、宿で休んでおくことにした。


丘へ登る。やたら石を積んである理由はわからずじまい。


写真を撮りながら歩くくらいの余裕はまだあったが、やはり高山病を発症し始めているようで、身体が重く、頭が痛い。
ジャム蔵はひょうひょうと歩いていたが、こまめに休憩を取ってこちらのペースに合わせてくれた。
休憩のときには宿で自分がもらったアップルティーを何杯でもくれた。


途中でネパールとイタリアの共同研究所へ。


看板から少し歩いて行くと、ピラミッドのような建物が…。




秋のハイシーズンのころなどは、ここに研究者が泊まり込むらしい。タフ。







それにしても辛い。
ここまで身体にむち打ったのは久しぶり。

ふと高校時代のラグビー部の練習を思い出した。
走って、ぶつかって、はしって、倒れて、また走って、思わず膝に手をつき、下を向いてぜーぜー言ってしまう。
しかし、「顔あげろーー!!!!」「声出せーーー!!!」と、部員たちでお互いを叱咤していた。

ストックに体重を預けて、顔を下に向けて地面とにらめっこしてたけど、それを思い出したら「あの時よりはまだ楽か笑」と思えて、よっしゃ!と顔を上げて歩いた。

身体が重くてたまらんけど、高校時代のラグビーや、大学でのドラムの練習で自分なりにつかんだ「身体の使い方」を頼りに歩く。
足だけでなく、腰、背骨、腕、全身の筋肉を意識して、神経を行き届かせて、地面に力を伝え推進力に。
最小のエネルギーで最大のフィードバックを。エコノミックに。
バガボンドの武蔵のように。

出発前に読んだ「モリー先生との火曜日」という本の一節も思い出した。
神経が徐々に侵されて、重い呼吸困難の発作に日々苦しみながら死を待つモリー先生。
モリー先生が途中で始めたのは、自分の体験している状況をじっくり味わい、説明してみるということ。
発作が起きるとたまらなく辛く、頭も混乱してしまう。
しかし、「今身体のここが痛くて、呼吸ができなくて…」と自分の身体がどうなっているのか、何とか頭で説明してみると、恐怖は少し和らいだ。
そんな感じのことが書いてあったような気がする。

このときの自分の頭の中はもう「しんどい、しんどい、しんどい…」と脳も軽いパニックになってるのかなと思った。
落ち着いて、身体の各部分の神経を探り、自分の身体がどういう状況なのか把握してみる。
確かに呼吸は辛いし、頭も痛い。
でも足はそうでもない…。
腹も落ち着いてる。
しんどいけど、ゆっくり動けばちゃんと歩ける。
ん、いけそう!

そんなことを意識していると、楽になったわけではないけど、身体をいくらかコントロールできている気はした。
時間はかなりかかったけど、何とかジャム蔵の「散歩道」はクリアした。

夕方に宿へ戻ったころにはもうへとへと…。



この日はパワーをつけねば!と思い、奮発してチキンカレーを夕飯に。
数日ぶりに食べたスパイスと肉で目もさめ、元気は出た。

しかしやはり身体は重く…
早めに寝るが、高山病の薬の副作用で夜中も何度も目が覚めトイレへ。
トイレへの移動もしんどい。

宿の他のトレッカーたちはみんな平気そう。
でも自分と浅井さんはぐったり…
「俺たち限界に来てますね…」と浅井さん。

日にちは12月30日、標高はほぼ5000m。
「エベレストから昇る初日の出を見る」というこのトレッキングの目的達成まであと一歩。
もしかしたら少し危険な状態なのかもしれんけど、あと一日だけ身体よもってくれ、と祈りながら続行することに。





つづく