獣の旅と音楽

旅の思い出、獣医としての生活、あと音楽とか

ヒマラヤ年越しトレッキング〜カラパタール登頂〜


12月31日。
8時ごろにロブチェを出発。
ロブチェ・パスはアップダウンの繰り返しで、これで最後なはず!と思って登ったら、
その先にまだまだ同じような道が続いて行くのが見えて萎えて、の繰り返しだった。


それでも昼過ぎにはとうとう、エベレスト街道最後の村・ゴラクシュプへ到着。標高5000mちょい。


左奥に見える丘がカラ・パタール。
カラ・パタールとは現地の言葉?で「黒い山」を意味するらしい。


中央に見える氷河のあたりにはエベレスト・ベース・キャンプがあり、
あそこからエベレスト登頂を目指す登山家たちが出発する。



カラパタールから帰還したっぽいトレッカー。


月面っぽい。



村は周囲を8000m級の山に囲まれる感じ。
ヌプツェ?ローツェ?は手前にある分エベレストより大きく見える。



天気も良かったので、このまま午後からカラパタールにチャレンジすることに。
「明日の朝までもってくれればそれでいい!」と、下痢止め、みそ汁、アミノバイタルなど、
ここまで温存しておいたアイテムを出し惜しみ無しで投入。


二時半、登頂開始。


カラパタールって遠目に見たらなだらかな丘で、何とか行けそうな気がした。
登ってるときも後ろを振り返ると絶景。



でも前方は本気で萎えるレベルの傾斜。



「いやちょっと待て、こんなん聞いてへん…」と、ここ数年でダントツな辛さに萎える。
旅ブログなどで調べても、最後の最後がこんなにしんどいとは誰も書いてなかった…笑

割と早い段階で休憩を取る。
浅井さんは自分より余裕があるようで、夕暮れに間に合うようにと1人先を目指した。

ジャム蔵とゆ〜〜〜〜〜〜っくりと昇る。
頭痛がして、呼吸が苦しくて、身体に力が入りにくくて、
「もうええやん…やめとこかな…」と思う。

でも休憩して呼吸が落ち着いてくると「行けるとこまで行ってみよ」と思えた。
今までのどの道よりもばてやすく、少し進んでは頭が痛くなり、心拍数が上がる。
その度に休む。
意識して深い呼吸をしてると、周りに自分の呼吸音が響いてるように聞こえた。
ジャム蔵が休憩のたびにくれる、宿でもらってきたというホットレモンが染みた。


だいぶ日も傾いてきた。



じきに、「あの岩まで行ったら休憩しよう…」と目標を設定するようになった。
歩いてみると、そこまでは何とか行けるもので、そこから先に進みたいと思った。
「とりあえずあの岩までは行く!」
ということを繰り返しているうちに、頭は痛いんやけど、また色々と考える。

これ楽器練習するときと同じことやってるな〜、とか、
自分で限界作るなって、こういうことなんかな〜、とか、
一歩一歩ってまさにこれやな〜、とか。

カラパタールの頂上はもう見てなかった。
とにかく次のあそこまで…。
途中でほんまに限界が来たらやめていいから、とにかくどこまで行けるんか試したい。



少し先に目をやると、ジグザグの急傾斜がまだまだ続いてて、
「これどこまで続くんや…あと何回繰り返したらええんや…」と気が遠くなるけど、
「知るか!とりあえず次のあの岩まで、あわよくばそこから一歩でも!」
と今自分が達成できそうなことに集中した。

身体の使い方を意識して、無駄な動きや力を省き、全身にすこしでも酸素を行き渡らせれるよう深くしっかり呼吸した。
運動部での練習、楽器演奏、読んだ本、聞いた話、その他もろもろ。
ここに来るまでに自分が経験したものを使って、全力で今に集中するのは本当に楽しくて、色んなことに感謝した。
つらすぎて、割とおかしなテンションにもなっていた笑。



5時。
ジャム蔵に「あの黒いところが頂上だ」と言われた。
夕暮れにはぎりぎり間に合った。


一足先に着いていた浅井さんとも合流した。
僕の具合が悪そうすぎて、きっと途中で引き返すだろうと思っていたらしい。
「よく来ましたね!根性ありますね!!」と言いながら固く握手してくれた。

本当の頂上まではまだあと少しあったけど、夕焼けまでもう時間もないし、
浅井さんによると景色もそんなに変わらんらしいので、ここで登頂は終了することに。


2012年最後の夕焼けに照らされる8000m峰。
世界で一番高いところの夕焼け。


この旅の準備を始めたときから見たかったものが見れた。



ジャム蔵と記念写真。
かけ声は「ヤク・パンケーキ!ナク・チーーーーズ!!」
(正直声を出すのも本気でしんどい)


趣味の行き倒れ写真や、浅井さんの分の写真なども撮るが、もう本当にしんどかった。
手ぶれを抑えるためにシャッター切る瞬間は息を止めたり、撮りたい構図のために微妙な体勢をキープしたり…。
本当に本当に本当に…(×50)しんどかった。


辺りが暗くなる前に下山。


帰りは下るだけと思いきや、傾斜がきついから足への負担も割とありだいぶつらい。
浅井さんの言う「シャリバテ」なのか、身体に力も入りづらい。
飴などを食べながら下ると少し楽になった。


ゴラクシュプまでは約45分で下山できた。



宿へ着く頃にはもう二人ともボロボロ…。
浅井さんはもう初日の出は断念すると言っていたが、自分は起きるだけ起きてみる、と言うと驚いていた。
自分よりボロボロな奴がそんなこと言い出すとは思ってもみなかったらしい。

でもハッタリでもそう言わずにはいられなかった。
このトレッキングの一番の目的は「世界で一番高いところから昇る初日の出を見ること」だったので。




つづく