[[2]ラスベガス]ラスベガス〜ビューリフォーばあちゃん〜
宿で朝食を取ってると、向かいの席のばあちゃんに話しかけられた。
「Fire of Valleyに行かないかい?」
このばあちゃん、グランドキャニオンにはツアーで行ってきたが、せっかくだから近郊の見どころもいろいろ行きたい。
でも自分は車の免許持ってへんから、運転できる人を誘っているのだそう。
自分はグランドキャニオンへの出発までは暇やし、外国の人たちとドライブして仲良くなれたら儲けもんやと思ってOKした。
話を聞くと、ばあちゃんはカリブ海の何とかっていう国から一人旅で来たらしい。
母国では脳に障害のある子供たち(ばあちゃんはSpecial Childrenと言ってた)の先生をしている。
約6週間のホリデイを利用して、西アメリカを周る予定。
旅行好きなようで、今までに南米や中米もかなり周ってきた様子。
グランドキャニオンをはじめ、素晴らしかったとこを一個一個説明してくれる。
その美しさを何としても伝えたいのか
「ビューリフォ〜〜!!!(beautiful)」
と言うときの感情の込め方が半端なかったので、
「ビューリフォ〜ばあちゃん」と勝手に名付けた。
Fire of Valleyにはもう一人、北欧から来た女の子が一緒に行くとばあちゃんは言う。
その子に
君も一緒に行くんやんな?
と聞くと
女の子「ええ〜…私ストリップ(大通り)に行きたいし〜ATMでキャッシュ下ろさなきゃだし〜…。」
と、あまり乗り気ではない様子…。
たぶん、ばあちゃんの押しの強さに断りきれんかっただけなのでしょう。
そのうちぷいっと外に出て行ってしまった。
ビューリフォーばあちゃんは、「あの子が戻って来たら、車を借りて行くよ!」とノリノリである。
しかし、1時間経ってもあの子は帰って来ない。
きっとあの子帰ってこーへんでー?と、ばあちゃんに言う。
めげないばあちゃんは周りの若者たちに片っ端から声をかけて誘ってみるが、みんな興味なし。
二人で車借りるんは高いし、これは行かれへんね…となった。
残念そうなばあちゃんだが、今度は俺のパソコンで調べ物をしてくれ!と言うてきた。
ラスベガスの西、ヨセミテ国立公園に行きたくて、ラスベガスでツアーを探したがどこも扱ってなかったみたい。
ヨセミテの写真をググって俺に見せ、「ビューリフォ〜!!!」を連発。
よっぽど行きたいんやろな。
調べてみると、確かにラスベガスからのツアーはあんまり無さげ…。
ばあちゃん、ラスベガスからツアーで行くんは難しそやで…?
ば「…」
…
ば「…ョ……」
………ヨ?
ば「ヨセミテぇぇぇ〜〜…」
は、半泣きになってしまった…。
さっきの北欧ビッチのブッチのダメージもあったからやろか…。
ちょっと待ってー!もうちょい見てみるからー!!
慌ててもう一回調べてみる。
けどべガスからのツアーは結局よくわからず…。
代わりに、ヨセミテ国立公園に行くにはLAまで行き、そこから電車やバスを乗り継いで行くのが王道みたいやとわかった。
ばあちゃんと一緒に、バスや電車の値段、本数などをネットで調べる。
値段もそんなに高くなく、二日あれば行けそう。
うっきうきのばあちゃんは、今夜にでもバスのチケットを取って、明日出発したいと言い出した。
で、バスターミナルは北のダウンタウンのアーケード(観光スポット)にあるし、一緒に行かないかい?とデートのお誘い。
これまた「ビューリフォ〜!!!」連発。
こりゃもう行くしかないでしょう!!!
夜。
ダウンタウンへ歩いて行く。
歩きながら色々としゃべる。
旅のこと、家族のこと、学校のこと。
ばあちゃんの母国語?はオランダ語なので、ばあちゃんの英語は聞き取りやすかった。
俺のたどたどしい英語でも、まあまあ意思疎通できた。
ダウンタウンは南のストリップとは違い、ちょっとこじんまりしてて、
札幌の狸小路や大阪の天神橋筋商店街をゴージャスにしてカジノとかいろいろ作ってみましたー!!て感じ。
ストリップよりもパフォーマーが多いし、仮装、ダンス、ライブ、アート、DJなど多種多様!!
個人的にはストリップよりも親しみやすくて気に入った。
ばあちゃんとぶらぶら歩く。
子供みたいに好奇心旺盛なばあちゃんは、パフォーマーやライブステージごとに足を止める。
ば「あの人は何だい?すごい怖い格好してるじゃないかい…。」
あれは夢の中に子供を引き込んで殺してまうやつやで〜。
ば「おお、やだよ。怖い怖い…。でも写真を撮りたいねえ。」
あ、ああいう人はチップあげんと写真撮ったらあかんねんで…ってほら止められた。
ば「チップ?チップって何だい?」
うーん、お礼と言うか、サービスしてくれた人に満足したら、気持ちの分だけあげるお金のことかな…?
ば「あ、ほら!!今がチャンスだよ!!!!」
他の人が写真を一緒に撮ってもらってるうちに、バシャバシャ撮りまくるばあちゃん。
一応チップあげたほうが…
ば「あの人がお金いっぱいあげてるし、怖い人も満足でしょう!(ニッコリ)」
たくましいっす。
ば「ほら。ポテチお食べ!」
うまいっす。
ば「バックパッカーはいつもお腹を減らしているからねぇ。(ニッコリ)」
ここで見物なのが、1時間ごとに行われるショー。
アーケード全体にきれーーなムービーが映し出され、派手に音楽が流れる。
ポテチ片手に見とれるばあちゃん。
口から出るのはやっぱり「ビュ〜リフォ〜〜〜」。
カリブ海の小島からやってきて、いろんなものが珍しくて美しくてたまらなさそうなばあちゃん。
ばあちゃんと言ってもまだ58歳やけどね。
でも、25歳の俺よりずっと心躍らせてる。
カリブの小島と日本、育ってきた時代と年数。
ばあちゃんの生い立ちとか境遇とかを妄想してみる。
今までもいろんなもんを見てきたんやろけど、今どんな気持ちなんやろ、とか
Special Childrenの子たちに、見てきたもん教えてあげたりすんのかな、とか
ずっと元気でおって欲しいなー、とか
そんなこと考えながら、ばあちゃん越しにショーを見てるうちにおしまいに。
この間亡くなったうちのばあちゃんとは背丈くらいしか似てへんけど、
やっぱりどこか重なったり思い出したりして、
一緒におる間ずっと泣きそうになってたのはここだけの秘密だ!わははは笑
バスのチケットを取った後の帰り道も、パフォーマーがいる度にばあちゃんは足を止める。
ば「あのエルビス・プレスリーは全然ダメだね!!」
え、ばっちりやと思うんですけど…
ば「年取りすぎだよ。本物はもっと若い時に死んじゃってるからね笑」
色んなパフォーマンスを堪能し
ロックとダンスのライブも最後まで見て
宿へ帰って就寝。
翌朝ばあちゃんは、宿の若者が車で出かけるついでに、バスターミナルまで送ってもらっていた。
いつのまに捕まえたんや、とただただ感心!
さすがっす!!
その後のばあちゃんからのメールによると、無事ヨセミテに着き、次はサンディエゴを見て無事帰国。
元気に働いてるみたいです。
旅の経過報告、英語の勉強を兼ねて、メールのやり取りはしていこうと思う。
ばあちゃんもEnjoy!!やで!!
おわり